脳がないのに迷路を解く?黄色い粘菌「モジホコリ」から学ぶ、自然界の知性
■森の中に潜む「黄色い天才」
みなさんは、「モジホコリ」という生き物を知っていますか?
森の中の落ち葉の下など、涼しくて湿った場所にいる、黄色いアメーバのような粘菌(ねんきん)です。
見た目はただのドロドロした物体ですが、実はこの粘菌、驚くべき能力を持っています。
それは、「脳も神経もないのに、考え、判断し、学習する」という能力です。
■アーティストが見つけた「共同制作者」
イギリスのアーティスト、ヘザー・バーネット氏は、この奇妙な粘菌に魅了された一人です。彼女はモジホコリを単なる実験対象ではなく、「共同制作のパートナー」として扱っています。
なぜなら、彼らの動きが非常に芸術的であり、同時に非常に合理的だからです。
■最短ルートを見つけ出す能力
モジホコリの凄さは、その動き方にあります。
例えば、迷路の中にモジホコリと餌を置くと、彼らは迷路全体に広がったあと、失敗したルートを引っ込め、最終的に「餌までの最短ルート」だけを残すのです。
これは「自己組織化」と呼ばれる能力で、リーダーからの命令がなくても、個々が勝手に判断して全体として最適な形を作る仕組みです。
過去には、この粘菌を使って「東京の地下鉄網」を再現させる実験が行われたこともあり、人間が設計した路線図とそっくりな効率的なネットワークを作り上げたことで世界を驚かせました。
■人間が粘菌から学べること
ヘザー・バーネット氏は、この「準知的(脳はないけど賢い)」な振る舞いから、私たち人間も学べることがあると語ります。
それは、強力なリーダーがいなくても、個々が情報を共有し合うことで、全体として賢いコミュニティを作れるということ。
小さな黄色い粘菌の動きには、AI開発や都市計画、そして私たちの社会のあり方に通じるヒントが隠されているのです。

