空白の半世紀を埋める50分間の独演会だった。11日の米州首脳会議で、キューバのラウル・カストロ国家評議会議長(83)は、米国に対する恨みをぶちまけた。
「さあ、私の出番が回ってきたぞ」
カストロ議長は両手をもみながら、円卓に居並ぶ首脳たちをぐるりと見回した。キューバが米州機構から排除されたのは1962年。輪の中へ戻るのに半世紀を要した。
「指定された演説時間は8分だが、私は過去6回の首脳会議から排除されていたわけで……8×6=48分くらいは話しても構わないだろう」
笑いが起き、同意を示す拍手に包まれる。だが冗談はここまで。時間軸を19世紀まで戻し、欧米列強に侵略されたキューバの近代史をとうとうと語り始めた。
「ちょうど117年前、1898年4月11日だ。米大統領は議会から承認を得て、独立戦争を起こした。勝利と引き換えにキューバ人の流した血が川となった。味方の顔をしてやってきた米国は、いつの間にか占領者として我が国を奪い取っていた」
キューバはスペインから独立したものの、実質的には米国の保護領となる。キューバ革命で主権を回復するが、グアンタナモ基地の租借権は米国に握られたまま。米政府が亡命キューバ人部隊を組んで軍事侵攻したピッグズ湾事件、国民の8割近くを生活苦に追い込んだ経済制裁−−。時折声を荒らげながら米国に虐げられた歴史を振り返った。
兄フィデル氏の言葉も引用した。「植民地支配と帝国主義による征服や奴隷制が、現代における開発の遅れや貧困の原因であることを忘れてはならない」
一方で国交正常化を決断したオバマ大統領へ敬意を表すことも忘れていなかった。「オバマ氏は正直な男だと思う。我々はこれからもオバマ氏を支えていかねばならない」
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