台湾有事には日本の防衛出動も視野に入れる日米、対中戦略を
「台湾への圧力が、そのまま日本の尖閣諸島への圧力に直結している」
近年、緊迫感を増す台湾情勢。もし台湾で有事が起きれば、日本はどうなるのか?私たちはどう備えるべきなのか?
今回は、国防と経済のスペシャリストをお招きし、**「中国の台湾侵攻シナリオ」と「日本の防衛」**について徹底討論しました。
テレビや新聞では報じられない、リアルでシビアな現状をわかりやすく解説します。
ゲスト紹介
本日の議論を深めていただくのは、こちらの豪華なメンバーです。
- 河野 克俊 氏(前・統合幕僚長 / 元・海将)
- 自衛隊制服組のトップを務めた、国防のプロフェッショナル。
- 高橋 洋一 氏(数量政策学者 / 内閣官房参与)
- 経済の視点から国際情勢を鋭く分析。
- 長谷川 幸洋 氏(ジャーナリスト)
- 進行役として鋭い質問を投げかけます。
- 梅宮 万紗子 氏(女優)
- 国民代表としての視点で参加。
【目次】
- 侵攻のタイムリミットは「6年以内」?
- なぜ今なのか?中国の焦りと経済事情
- 恐るべき「3つの侵攻シナリオ」とハイブリッド戦
- 米軍は介入するのか?その時日本は…
- 「台湾の危機=日本の危機」という現実
1. 侵攻のタイムリミットは「6年以内」?
米国のインド太平洋軍司令官が**「中国の台湾侵攻は6年以内(2027年まで)にあるかもしれない」**と発言し、衝撃が走りました。この真意はどこにあるのでしょうか。

河野さん、この「6年以内」という数字、どう分析されますか?
河野(前統幕長):
「6年以内」つまり2027年というのは、非常に現実的な数字です。理由は2つあります。
- 人民解放軍の創設100周年であること。
- 習近平国家主席の「3期目」の実績作りです。
河野(前統幕長):
「6年以内」つまり2027年というのは、非常に現実的な数字です。理由は2つあります。
習近平氏は2022年の党大会で異例の3期目を目指しています。本来、鄧小平が定めた「2期10年」という不文律を破るには、毛沢東ですら成し遂げられなかった「台湾統一」という強烈な実績が必要です。これを手土産に、長期政権、ひいては終身指導者を狙っていると考えられます。
また、軍事バランスの変化も深刻です。かつて1996年の台湾総統選挙の際、中国の威嚇に対して米空母が派遣され、中国は沈黙しました。しかし、現在は中国の軍事力が増大し、インド太平洋地域においては米軍が劣勢に立たされつつあるという焦りがアメリカ側にもあるのです。
2. なぜ今なのか?中国の焦りと経済事情

軍事面だけでなく、経済的な視点からも「侵攻のリミット」が見えてきます。
高橋先生、経済のプロから見てこのタイミングはどう映りますか?
高橋(数量政策学者):
中国経済の「成長の限界」が近づいている点に注目すべきです。中国の一人当たりGDPは約1万ドル。実は、独裁国家でこれ以上の経済成長を長期的に維持できた国は歴史上ほとんどありません。今後5〜10年で中国経済は頭打ちになると予測できます。
経済が行き詰まった時、独裁者が国民の目を逸らすために使う常套手段が「対外進出」です。
北京冬季オリンピック(※対談当時)という国威発揚イベントが終われば、残されたカードは「台湾」と「尖閣」しかない。経済が失速する前に動く可能性は十分にあります。
3. 恐るべき「3つの侵攻シナリオ」とハイブリッド戦
では、具体的にどのような形で侵攻が始まるのでしょうか? 米外交問題評議会などは以下の3つのシナリオを指摘しています。
【想定される3つのシナリオ】
- 周辺島嶼の奪取(金門島や東沙諸島など)
- 海上・航空封鎖(台湾を隔離する兵糧攻め)
- 台湾本島への直接侵攻(空爆、特殊部隊、上陸作戦)
しかし、河野氏は「戦わずして勝つ」もう一つのシナリオを危惧します。
河野:
いきなりミサイルを撃ち込むのではなく、「ハイブリッド戦」を仕掛けてくるでしょう。
台湾内部での工作活動、サイバー攻撃、そして親中派勢力の育成です。
ロシアがクリミア半島を併合した時のように、「中国系住民を守る」という名目で、あるいは傀儡政権からの「支援要請」という形を作って介入する。これが中国にとって最もリスクの少ない「最上の策」です。
高橋:
そう、民主主義の逆利用ですね。選挙で親中派の総統を誕生させれば、戦争せずに併合できる。これが失敗し、平和的な統一が不可能だと悟った時、初めて「強襲作戦(ハードな軍事侵攻)」に切り替えるはずです。
4. 米軍は介入するのか?その時日本は…
台湾が攻撃された時、アメリカ軍は助けに来るのでしょうか?
河野:
条約上の義務はありませんが、もしアメリカが台湾を見殺しにすれば、アジア太平洋でのアメリカの信頼は地に落ち、同盟ネットワークは崩壊します。したがって、アメリカは軍事介入すると考えます。
長谷川:
もし米軍が動くとなれば、当然、日本にも協力を求めてきますよね。
河野:
間違いありません。台湾有事は、日本にとって単なる「周辺事態」ではなく、「存立危機事態」と認定される可能性が高い。
なぜなら、台湾と日本の与那国島はわずか100kmしか離れていません。戦闘が始まれば、日本の南西諸島も確実に戦域に含まれます。 自衛隊が防衛出動し、米軍と共に戦う覚悟が問われることになります。
5. 「台湾の危機=日本の危機」という現実
今日のお話を伺って、正直怖くなりました。「台湾の問題」だと思っていたことが、自分たちの命に関わる問題だとは…。多くの国民はまだその実感が持てていない気がします。
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長谷川:
その通りです。多くの日本人が「台湾は外国の話」だと思っている。しかし、地図を見てください。
河野:
日本列島、特に南西諸島は、中国が太平洋に出るのを防ぐ「第一列島線」の最前線に位置しています。中国にとって、台湾と尖閣はセットのようなものです。
高橋:
日米の「2+2(外務・防衛担当閣僚会合)」でも、台湾海峡の平和と安定の重要性が明記されました。これは「日本もしっかり覚悟を決めろ」と突きつけられているのと同じです。
まとめ:日本には「最悪のシナリオ」を考える政治が必要
今回の議論で浮き彫りになったのは、「台湾有事は日本有事である」という冷厳な事実です。
河野前統幕長が指摘するように、東日本大震災の教訓と同様、私たちは「最悪のシナリオ」を想定して準備しなければなりません。「一つの中国」という建前に逃げ込める時代は終わりました。
平和ボケを捨て、現実的な議論と備えができる政治家、そして私たち国民の「覚悟」が今、試されています。

