拝米主義が日本を滅ぼす:外交政策と軍事政策における危険性

目次

はじめに

 日本における拝米主義、すなわちアメリカを崇拝し模倣する傾向が、特に外交政策と軍事政策において日本にもたらす危険性について論じる。過去79年間、日本はアメリカ文明を崇拝し、その方式を模倣することで国家の発展を図ってきた。しかし、この姿勢は日本の独自性を損ない、国家の存続を脅かす結果をもたらしている。

1. アメリカ外交政策の失敗

1.1 冷戦後の国際政治

1991年末のソ連崩壊以降、約32年間のポスト冷戦期においてアメリカの外交政策は明らかな失敗を示している。この期間、アメリカは国際社会でのリーダーシップを維持しようとしたが、多くの面で期待に応えられなかった。

1.2 具体的な失敗事例

アメリカの外交政策の失敗は、以下のような事例に見られる:

1. イラク戦争(2003年):大量破壊兵器の存在を理由に開始されたが、結果的にその存在は確認されず、中東地域の不安定化を招いた。

2. アフガニスタンからの撤退(2021年):20年に及ぶ軍事介入の末、混乱の中で撤退し、タリバンの復権を許した。

3. 北朝鮮の核開発問題:度重なる交渉にもかかわらず、北朝鮮の核・ミサイル開発を阻止できていない。

これらの事例は、アメリカの外交政策が必ずしも成功するとは限らないことを示している。

2. 日本の外交・軍事政策の問題点 2.1 戦後日本の無責任な態度

1946年以降、日本人の外交政策と軍事政策に対する態度は非常に無責任であると指摘される。具体的な例として:

1. 安全保障政策の「アメリカ任せ」:日本国憲法第9条を盾に、自国の防衛をアメリカに依存し続けている。

2. 外交における主体性の欠如:国際問題に対して、アメリカの方針に追従する傾向が強い。

2.2 歴代首相のアメリカへの働きかけ

戦後の日本の首相たちは、アメリカとの関係強化に尽力してきた。主な事例は以下の通りである:

1. 芦田均首相(1948年)

   – 「芦田メモ」の作成:日本の再軍備の必要性を示唆し、アメリカとの協力関係の重要性を強調。

2. 吉田茂首相(1946-1947, 1948-1954)

   – 1951年:サンフランシスコ講和条約と日米安全保障条約の締結。

   – 1952年:アメリカによる沖縄の施政権継続を容認。

3. 岸信介首相(1957-1960)

   – 1960年:日米安全保障条約の改定。核兵器持ち込みに関する「密約」の存在が指摘されている。

4. 佐藤栄作首相(1964-1972)

   – 1969年:ニクソン大統領との間で沖縄返還に関する密約。

   – 1972年:沖縄返還の実現。ただし、米軍基地の継続使用を認める。

5. 田中角栄首相(1972-1974)

   – 1973年:沖縄への核兵器再持ち込みに関する密約の疑い。

6. 三木武夫首相(1974-1976)

   – 1975年:非核三原則の柔軟な解釈を示唆。

7. 中曽根康弘首相(1982-1987)

   – 1983年:日米同盟を「運命共同体」と表現し、対米協調路線を強化。

8. 小泉純一郎首相(2001-2006)

   – 2001年:テロ対策特別措置法の成立、自衛隊の海外派遣実現。

2.3 外務官僚の米国従属

日本の外務省官僚の間にも、アメリカへの従属を歓迎し、その関係の維持・継続を望む傾向が強く見られる。これは以下のような形で表れている:

1. アメリカの政策方針を積極的に受け入れ、国内で推進する姿勢

2. 日米関係を最優先する外交方針の継続

3. アメリカとの協調を重視するあまり、日本の独自の外交戦略の構築を怠る傾向

3. 日米同盟の本質

3.1 アメリカの真の動機

1951年のサンフランシスコ講和条約以降も、アメリカが日本に駐留を続けた理由は、単なる日本の平和維持ではない。アメリカには別の動機があり、それは東アジアにおける自国の利益を確保することにある。具体的には:

1. 中国の台頭に対する牽制

2. 北朝鮮の脅威に対する抑止力

3. 地域におけるアメリカの影響力維持

3.2 東アジアのパワーバランスの変化

今後、東アジアのパワーバランスが変化していく中で、日本はより危険で惨めな状況に置かれる可能性がある。これは、日米同盟に過度に依存することの危険性を示している。例えば:

1. 中国の軍事力増強による地域バランスの変化

2. アメリカの相対的な影響力低下

3. 北朝鮮の核・ミサイル能力の向上

4. 戦術核兵器の脅威

4.1 戦術核兵器の特性

戦術核兵器は、ICBMやSLBMなどの戦略核兵器とは異なり、比較的小規模な核兵器を指す。広島・長崎に投下された原子爆弾よりもさらに小型のものも含まれる。特徴として:

1. 使用の敷居が低い

2. 局地的な使用が想定される

3. 通常戦力との境界が曖昧

4.2 日本への影響

戦術核兵器の増加は、日米同盟の空洞化をもたらす可能性がある。これにより、日本の安全保障環境が著しく悪化する恐れがある。具体的な影響として:

1. 核抑止力の信頼性低下

2. 日本本土が攻撃対象となるリスクの増大

3. 日米同盟の実効性への疑問

結論

アメリカを崇拝し、その政策を無批判に模倣する「拝米主義」は、日本の外交政策と軍事政策において深刻な問題をもたらす。歴史的に見ても、日本の政治指導者たちはアメリカとの関係を過度に重視し、時に国民に明かされない「密約」を結びながら、日本の外交・安全保障政策を形成してきた。

この傾向は、日本の独自性と国益を損なう結果をもたらしている。特に、東アジアのパワーバランスが変化する中で、日本がアメリカに過度に依存することの危険性は高まっている。さらに、戦術核兵器の脅威は、日米同盟の実効性に疑問を投げかけている。

日本は自国の利益と安全保障を第一に考え、独自の戦略を構築する必要がある。そのためには:

1. 自主的な外交政策の立案と実行

2. 自国の防衛力強化と自立的な安全保障政策の確立

3. 地域のパワーバランスを考慮した多角的な外交関係の構築

これらの取り組みを通じて、日本は拝米主義から脱却し、真に独立した国家として国際社会で役割を果たすことができるだろう。

アメリカ崇拝は日本の自滅〜日本が滅びる4つのシナリオ(伊藤貫)

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